静岡自然を学ぶ会訪問記
アニメ映画「隣りのトトロ」のワンシーンにトトロが二人の少女にドングリの置きみやげをするシーンがあります。深夜、ドングリは芽をだし大樹にまで成長して少女たちの目を見はらせます。映画を見たせいか、わが家でも秋になると娘がドングリを拾ってきます。しばらくはお皿にあけておきますがその後はゴミ箱にポイ。
静岡市の主婦のグループ「静岡自然を学ぶ会」の会報に代表の池上理恵さんが書いています。
「一見とるに足らないように思える出来事が、実はかけがえのないものなのかもしれません。こどものつぶやき、親子のやりとり、調べてわかったこと、うれしかったこと、どんなことでもメモして送ってください」
自分たちが子供の頃には数珠玉でネックレスを作ったり、朝顔で色水を作ったりと、暮らしの場の延長で自然と仲良くできたのに、今の子供たちにはその当たり前にできていたことがむずかしくなってきています。空き地や原っぱはマンションや駐車場に変わり、あぜ道や小川もコンクリートで固められ、ふたをされてしまいました。家に帰ればマンガにファミコン、早期教育ブームもますます加熱。いやそれ以上に親の気持ちに余裕がない。効率と利潤を最上とする価値観に巻き込まれてしまっているなと反省させられます。
幼年時代は子供にとっては神話的な時間。親は仕事の手を休め、子供と過ごすことでゆったりとした黄金色の時間を共有できるのでは。とはいえ親子で自然と遊ぶのにはちょっとした工夫やヒントがいりそうです。池谷さんに紹介され、会員の麻機沼の近くに住む栗山由佳子さん宅におじゃましてみました。栗山さんはわが家と同じ小学2年生と幼稚園児のママ。玄関先でまず目に入ったのは野草のリース。山芋のつると赤い実でできています。先週、伊豆にヒツジグサを採集にいったとき、ついでに手に入れた材料だそうです。塀の上にはドングリや小石、すすきの穂がユーモラスにコラージュされています。子供たちの手で無造作に並べられた自然のオブジェは見るものをほっとさせます。下はと見ると発泡スチロールの水槽の中にホテイアオイとヒツジグサ。水槽の中には静岡にしかいないというメダカもいます。別の水槽にはタガメ、ザリガニ。バケツの中の紫色の色水はヤマゴボウの汁だそうです。下駄箱の上には高さ20センチものマツボックリやドングリのヤジロベイを始めとして秋の恵みがたっぷり。
栗山さんと近くの麻機沼に歩いていくと、なんとキジのお迎え。動物園や桃太郎の絵本でしか見たことがなかったのに! と驚いているうちにケーンと一声鳴いて行ってしまいました。清水の流れる小川の土手にはなつかしい数珠の草むらがあり、トンボが飛んでいます。トンボの種類は全部で33種類。沼では白サギも羽をやすめています。カメにカワセミ、ゲンゴロウ、ザリガニ、ミズスマシ。子供と行くときには長靴、タモ、双眼鏡、図鑑が必携だそうです。
「最近、整備が始まり重機が入ってきてしまって、今までいた動植物がいなくなってしまうのが残念で・・・」栗山さんが顔を曇らせます。
保護か開発か。宮崎アニメ「もののけ姫」の主題でもありますが、なかなか難しい問題です。地球温暖化や環境破壊の問題についても理念先行ではなく、親子で自然を楽しみ、大切に思う暮らしをする。そんな小さなことから最初の一歩が始まるのかもしれません。静岡自然を学ぶ会の連絡先はは静岡市北1664-51池上さん宅。<産経新聞静岡地方版 97年11/11掲載 空飛ぶらくだ 豊田記>